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臨床心理士がユニオンはじめてみた「⑥2月2日の記者会見 加藤さん(仮名)の言葉」


2024年2月2日、心理職ユニオンは東京都スクールカウンセラー大量雇止めについて問題提起をすべく記者会見を行いました。会見の場では、R6年度も都SCとしての勤務を継続したいと志願し、採用面接を受験したけれども不採用となった5名の現役都SCがそれぞれの思いや意見を伝えました。


個人情報保護のため、記者会見自体は公開できませんが、できるだけ多くの方々に当事者の声を聞いて(知って)いただきたいと思います。

今回は、その中の一人である加藤さん(仮名)が会見でお話されたことをここに紹介させていただきます。

                            

   






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1.自分自身のこと

 

私はこれまで約20年間スクールカウンセラーの仕事をしてきました。

スクールカウンセラーに採用される前から、保健所、福祉施設、医療機関、親の会などで非常勤の心理職として勤務してまいりました。

スクールカウンセラーに従事してからも、保健所、発達センター、子ども家庭支援センター、親の会、教育委員会などで心理職として、子どもさんとその保護者さんの支援に携わらせていただいてきました。


心理職は非常勤の雇用形態が多く、現在も複数の職場の非常勤のかけ持ちでずっと来ております。

この働き方は、あらゆる面で補償がなく不安、不安定ではありますが、心理職自体が非常勤が多く、私が現場に出た当時は特に非常勤での雇用が主であったことと、複数の領域で仕事をすることはそこで多くのことを経験して学び、それを活かしてそれぞれ他の領域の職場でお会いする子どもさん、親御さんたちにとって、よりよい支援を行えるというとても重大な意義、メリットがあると感じてきていたので、現在まで誇りをもって続けてきました。

 

スクールカウンセラーに応募した経緯ですが、約20年前、当時、都の中学校への全校配置が始まってまだ数年の頃でした。

当時、福祉施設、医療施設、親の会などで出会う親御さんたちの中から、とても多い不安、困りが「学校に上がってしまうと・・・」「学校では・・・」というものでした。

発達上の困難を抱えているお子さんの保護者さんからは、入学前の不安、小学校、中学校での不安、困りをよくお聞きしていました。

例えば

・幼稚園、保育園の時のようには先生が丁寧に見てくれない、人数的にも見れない

・学校がまだ発達障害について理解が進んでいない

・学校ではうちの子どもは先生に怒られてばかりいる

・学校の先生から、電話がかかってくるのが怖い

・いじめが心配。いじめられてもうちの子どもは気づけない。

・子どもが先生に相談できない。

・いじめを先生に相談したが、うちの子にも原因があると言われる。

・登校しぶりが始まった。

など、お聞きしました。

 そして

・「先生みたいな人が学校にいてくれればいいのに」という親御さんからのお声も何度もお聞きして、学校に心理職が入ることの必要性があると考えました。

 

また、保護者さん自身が困難を抱えていらっしゃるご家庭の支援もさせていただいている中で、保育園と比べて学校ではそういう支援体制が難しい経験がありました。

子ども支援のためには親御さん、ご家庭を支えることは絶対に大事ですので、そういった面からも、学校に心理職が入ることの必要性があると考えまして、東京都のスクールカウンセラーの募集に応募して、無事採用されてスクールカウンセラーの仕事を始めました。

はじめは1校から始めて現在は2校に勤務しております。1校につき年間38日の勤務と東京都ではなっております。

  

・スクールカウンセラーの業務について

私の経験、感覚ですが、他の職場との違いは、私が行っている他の職場は私以外にも心理職が大勢いますし、心理職以外の対人支援職がたくさんいます。

しかし、学校は授業を行い、生活指導を行う場ですので、私以外はほとんどが教員です。

そのような環境の中ですので、スクールカウンセラーには心理職の中でも他の職場と比べてとても難しいスキルが必要とされていると感じています。

例えば、

教員の先生方ももちろん子どものために、という思いでいらっしゃいますが、「指導する」という立場の教員とは、子どもの見立て、支援方法の考え方が違ってくることも多々あります。

スクールカウンセラーとして、子どもさんの話を聞くこと、問題行動、発言の背景に何が考えられるのか、どのような支援を行なったらよいのか、を心理の専門的な知識と経験から考察することは大変な責任ある業務であり、さらに専門性の違う教員とのコンサルテーションが非常に重要でありスキルが必要とされると感じています。

またスクールカウンセラーというのは話を聞くだけで終わるのではなく、支援をつないでいくために、ケースワーク、コーディネートの力も必要になってきます。

このように難しい仕事であり、常に緊張感をもって臨み、多くの子どもさんたちやご家庭を支援して、それなりに成果を出してきました。

 

スクールカウンセラーは何年続けていても、毎年秋に出る募集に対して応募書類を送って、東京都からの合否判定が1月末に出て、配置校、配置校数の決定が3月に出る、というもので、これ自体も非常に不安、不安定なものなのですが、これまで学校からの評価も良好で約20年間続けてきました。

 

 

 2.不採用になった経緯

 

令和2年度からこのスクールカウンセラーは東京都の会計年度任用職員となりました。

更新は4回までということで、今回初めて、長く勤務してきた多くのスクールカウンセラーが、新規の応募者と同じように受験し直すことになり私も面接試験を受けました。

 

先に話しましたように、私は約20年スクールカウンセラーの仕事を続けて実績を積んできており、今後も学校現場で専門的な知識と経験を活かして多くの支援を行える、と考えていたのですが、残念ながら結果は「合格には至らず、年度途中の中途退職等により生じた欠員の補充任用候補者」で、不合格、不採用となりました。驚きました。

この結果を管理職に報告したところ、管理職も「良い評価をつけたのに!」と驚き納得できずにいました。

 

 

3.不採用になったことへの思い

 

学校では、相談者に誠実に対応してそこから多くの子どもさんたちがそれぞれ改善している、子どもも保護者も支えられている、また教員とのコンサルテーションも役に立っていると、学校評価も良かったので、正直落ちるとは思っていませんでした。4月からもこの仕事を続けられると思っていましたので非常に驚きました。困惑しております。

 

※学校に心理職がいることの意味

わざわざお金を払って行く民間の相談室、とか、医療受診という高いハードルを越えて行く病院の心理職とは違って、学校の心理職・スクールカウンセラーは、無料で、地域の学校でアクセスできるところです。

全ての子どもが通る学校に心理職が入ることで学校のセーフティーネットの機能が高まっていると考えています。

すべての子どもがこぼれ落ちないように、という意味があると思っています。

だからこそ、重要度が高いと思っています。

そして全ての子どもが通るところなので、幅広い知識と経験、質の高いスキルが必要とされると思っています。

先ほども言いましたが、子どもさんの話を聞くのはもちろんですが、そこからしっかり専門的に見立てて、校内でのコンサルテーション、支援の体制を作っていく力が求められます。


しかし、今回、私だけでなく、他にも長年スクールカウンセラー勤務をしてきた人が不採用となった、と聞いております。

 

今回、どのような合否基準で長年の経験、実績のあるスクールカウンセラーが不採用になったのかがわかりませんが、子どもたちのために、学校現場のためにこれがいいとは思えませんでした。とても心配です・・・

私は残念ながらもう学校には戻れないかもしれませんが、声を出せずにいる子どもたちはたくさんいます。

相談室で「話せるのはここだけなんです」と必死に子育てされている親御さんたちがたくさんいます。

学校という社会の末端の現場でもっと多くの子どもたちの支援を行いたかったし、一生懸命に子どもたちと向かい合っている先生方と一緒に頑張っていきたかったですが仕方ありません。

どうか子どもたちのために、子どもたちが安心できる学校になっていってほしいと願っています。


 

それから、私の場合、4月から2校分の収入がなくなり、年収の3分の2を失います。

私たちも労働者で、仕事をして対価をいただいています。

私たちは非正規ですのであらゆる補償はなく、失業保険がないので仕事を失うと生活に困ります。

このように社会からこぼれ落ちて、家賃、ローン、生活費に困ることになります。

 

受験し直しとはいえ、長年実績を積んできているので4月からも仕事を続けられるだろうと思っていたのに、不採用の通知が届いて大きなショックを抱えながら、年度末のこの時期から4月からの就職活動をしなければならない不採用になったスクールカウンセラーが他にもたくさんいるのだと思います。

 

心理職は専門性の高い仕事ですが、雇用については多くの問題があると考えています。

今回のスクールカウンセラーのように突然クビを切られる恐れを抱えて仕事をしなければならない状況は、専門性の発揮の妨げになります。

いつまで職場にいられるかわからない状況では、相談者との人間関係を築く見通しも変わってしまい支援自体が先延ばしにすることになりよりよい支援ができなくなります。

全ての心理支援を必要としている困っている方たちが、質の高い心理支援を受けられるようになるためにも、雇用年限を撤廃するなど雇用の改善がされていく必要があると思います。

 

 

最後に、今回、意を決してこのような記者会見の場に臨ませていただいたのは、自分自身のためというより、スクールカウンセラーを必要としてくれている、子どもさん、親御さん、教員のため、それから心理の専門家として社会に根ざして生きて行こうとしている若い心理士や心理士を目指す方のため、という思いがありました。

 

そして、今回、自分自身が社会から放り出されて、人として扱われていないのではないか、という恐怖感を強く感じました。非正規、会計年度任用職員は、社会的にとても弱い立場である、と改めて感じました。

今の子どもたちが将来大人になって働くようになった時の職場、社会で、こんな理不尽な、悲しい目には遭ってもらいたくない、人を大切にする良い社会になってほしい、という思いがありました。

 

教育は、子どもたちを育てる、人を育てる、とても大事な、一番大事な仕事です。

都教委には、これで本当に学校が良くなるのか、学校がよくなるように、ぜひ真剣に考えてほしい、という思いがありました。

 

 私からは以上です。ありがとうございました。

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