アンケートからみるSCの雇用不安定さがもたらす影響について
アンケート結果から、はっきりと現れたのは、1年雇用(任用)という雇用の不安定さへの不安でした。「この先、雇用契約が更新されなくなる可能性について」という質問に対しては、「不安に感じる」の回答が69%、「やや不安に感じる」の回答が22%であり、合わせると約9割の都SCが雇用の不安定さに不安を感じていることになります。
また、職場においてストレスとなる要因について聞いた選択式の質問では703人中373人が「雇用の不安定さ」を選択しています。半数以上が、SCとして働く上で「雇用の不安定さ」がストレスとなっていることが明らかとなりました。
それでは、雇用の不安定さが具体的にどのような影響をもたらしているのか見ていきましょう。
校数削減という不安定さ〜生活不安の恐怖〜
SCは会計年度任用職員という1年雇用(任用)の職にあてはめられています。ですので、毎年、雇用(任用)が切られるというリスクを持っていることになりますが、さらにSCの不安定性の大きな特徴として、校数が削減されるという問題があります。
担当する校数は上限が3校と決まっていますが、アンケートからは校数が突然削減されるという事態jiが多発していることがわかりました。多くの人にとってS Cの収入は生活の収入源の支柱であり、この収入が突然失われ、大幅な収入が減ってしまうと、生活への支障は甚大です。
また、校数の知らせは毎年3月です。例えば、2校をこれまで担当していたにも関わらず、3月に1校削減されてしまうと、次年度まで1か月もなく、4月から収入を補填する代替の職の確保も困難です。SCの給料は他の心理職場と比較すると比較的高い分、突然の大幅な収入減少は深刻な問題です。
そもそもの1年雇用(任用)と合わせて、校数の削減が、よりSCの不安定さを助長しているわけです。
実際にアンケートの自由記述では、1年雇用(任用)および校数削減については、多くの不満の声が上がっています。
・「毎年受験結果がわかるのは年度末、合格しても校数を減らされているかもしれない、ビクビクしています。」
・「雇用期間が1年で次年度の採用の合否通知が1月下旬ごろに届くが、もし不合格・不採用となった場合は、その時点から就活しなければいけなくなる。通知が来るまでいつも安心できない」
・「1年という雇用期間の短さと更新されなくなる可能性には不安を感じます。」
・「毎年配置校数が減らされるかもしれないことを不安に思っている」
・「次年度の担当校数が(校長や教育委員会など)何のお話もなく減ってしまいました。任用は1年となっているので、学校の子どもたちや保護者の方々には、4月からまた会えるか分からないとご説明はしているものの、”雇用””労働”という観点、家計の問題、家族を養っていくという点で、1週間前に通達され理由が分からないまま終わるというのは精神的に非常に苦しく感じました。」
「1年ごとの”応募”も負担です。使われる身の立場の弱さはずっと感じています。」
「SCの収入が生活費の主要な部分になっていることに対して、雇用契約が意に反して更新されなくなるという実態は不安です。配置校数が減らされるときは、何の前ぶれもなく3月末に通知がくるので、就職活動もできません。」
「次年度が始まる直前に急に配置校数が減らされてしまい4月から生活費の為、家庭の収入減の確保のために就職活動を現在に至るまで続けています。減らされた理由は都に問い合わせても全く答えてくれませんでした。」
このように、校数の「予告のない一方的」な削減によって、大幅な収入の減少から大きな打撃を受けるSCが多くいることがわかりました。また、いつ切られるかわからない、不安定な身であることが精神的にも負担になっていることが伺えます。
雇用更新の基準となる評価に怯えながら働くSC
SCは毎年、担当校の校長から人事評価を受けることになっています。この評価が次期の更新に関わっていると思われますが、SCには開示されることなく評価はブラックボックスです。日々、働く中で、管理職や他の教員からの評価を気にしながら働かざるを得ないわけです。
実際にアンケートの自由記述からは以下のように、評価に関して不安の声が寄せられています。
・校長との相性が悪かったり校長がSC活動の理解が低い場合、評価が悪くなり次年度の採用に影響がでるのは大きな不安です。
・教育分野で働かれてきた管理職が、心理職であるSCの働きをどれくらい正当に評価できているのか不明です。評価制度の見直しなども必要ではないかと思います。
また、管理職もいろいろな方がいらっしゃる為、SCに対する評価の妥当性、信頼性が保証されるものではないと思います。不当な評価された結果、SCが職を失うこともあるのでは、という懸念があります。
・教育相談に対する校長の姿勢が評価に影響するように思うので、不安がある
・採用の合否が校長評価という点は校長の性格や判断に依る部分が大きい。校長が評価をする方法だとしても基準や目安が示されているとよい。
・次年度の採用の合否が校長評価であることによって、管理職の先生方からの評価を過剰に気にしてしまう。
・(配置校数の削減や異動があったが)業務上の評価だけでなく管理職の方が主観的な感情によって評価される場合があっても何も申し立てられなかったです。
・契約が1年ごとであり、管理職の評価によって次年度の生活が大きく左右されること、社会保障がないなかでこの仕事を続けていくことに不安が強いです。
・評価を盾にして取りハラスメントを行う管理職に当たってしまった
これは、ほんの氷山の一角であり、実際は他にも評価と雇用に関する不安の声がたくさん寄せらています。
SCという外部機能を果たすべき職の性質上、校長や教員らとの意見が対立することもあり得るわけであり、むしろ、ちゃんと専門職としての意見が言えることが質の高い業務に資することになります。
しかし、SCの専門性や役割をきっちり理解していない管理職からの評価が雇用の更新に影響を与えかねない、今の状況では、専門性の発揮も不十分になってしまいます。そもそも、雇用が1年ではなく、継続が約束されていれば、あるいは少なくとも更新の基準が明確であれば、不安は大きく軽減し、働きやすくなるでしょう。(なお、「評価基準」については過去ブログ参照)
このように、雇用の更新の要素となる、校長評価に怯えながら働かなければならない環境は、SCとしての専門性の発揮を妨げる影響をもたらしていると言えるでしょう。
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